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教育技術法則化運動論3



教育技術法則化運動のパート3です。

前回次のことを告げて終わりました。

>  次回は、この教育技術について、
>
>   1 ある教育技術を知る。
>   2 ある教育技術を理解する。
>   3 ある教育技術を使う。
>   4 ある教育技術を使いこなす。
>   5 優れた教育技術の中から、そのとき必要なものを選択し、使う
>   6 優れた教育技術の中から、そのとき必要なものを瞬時に選択
>    し、使いこなす。
>   7 優れた教育技術をそのときの状況に合わせて、組み合わせて使
>    かう。
>   8 優れた教育技術を開発する。

 今回は、このことについて詳しく述べていきます。

1 ある教育技術を知る。
 
  教育技術にも優れた技術とそうでない技術とがあります。
  言い換えると次のようになります。

   優れた教育技術・・・・・効果がある
                 子どもの動きが変わる
                 教育現場で実際に役に立つ
   そうでない教育技術・・・効果がある
                 子どもの動きは変わらない
                 教育現場で役に立たない


  私が「ある教育技術」と言っているのは、もちろん前者の方です。
  教師としての力量を高めるために、授業の腕を上げるために、優れ
 た教育技術をたくさん知る必要があります。
  優れた教育技術には、どんなものがあるのか。一つ例を示しましょ
 う。
  
  子どもたちがある作業をしているときに、教師は「ある説明」したい
 とします。そのとき、子どもたち話をしながら作業をしています。手に
 は何かを持っている状態です。 
  
  このとき、「一人残らず話の内容を伝えたい」というのが教師の意図
 だった場合、第一声をどのように言うのがいいのでしょう。言い換える
 と、どのような指示を出すのがいいのでしょう。(このときの「指示の出
 し方」が教育技術なのです。)
  いくつか考えられます。

  1 いきなり説明を始める。
  2 「話をします(説明をします)。」と言ってから、説明に入る。
  旨を告げ
  3 「先生の方を向きなさい。」と言って教師の方に注目させてから、
   説明をする。
  4 「今持っているのを置きなさい。話をします。」と言ってから説明
   に入る。
  5 床に座っている状態だったら、「先生の方におへそを向けなさい
   。」と言って聞く体勢をつくらせてから、説明に入る。

 繰り返しになりますが、このときの教師の意図は「一人残らず話の内容を伝える」
です。「一人残らず教師の話す内容を周知させる」というこ
とが教師の意図です。
 この観点に従って、上記の五つを分析し、評定してみます。
 1は、下の下です。
 突然話が始まったので、子どもたちのほとんどは、そのとき「何が始まったのか」
と思うことでしょう。しばらくして「あっ、先生は何かの説明をしているんだ。」と
気づくことでしょう。
 しかし、教室はざわついており、まだ話をやめない子どももいることと思います。
 1はなぜ下の下なのか。次の原則を意識していないからです。

   あることを伝えたいときは、子ども全員の意識を教師の方に注目 
 させてから話を始めよ。

 まず、意識を話し手に向けさせる段階が欠落していたのです。

 では、2はどうなのか。
 中の下といったところでしょうか。 
 2は、「教師が今からしようとしていること」をまず子どもたちに伝えています。
つまり、今からすることの「予告」をしています。このような「予告の指示」はとて
もいいのです。
 今から何が始まるのか、聞いた者がそこにサッと意識が向くからです。それも端的
な言い方で言っています。
 この指示は「注目させる」働きのある指示なのです。これだけで、私は
「中」の評定をしたのです。 
 しかし、「中の下」です。なぜか。
 物を持って作業をしていた子にとって、やがて意識が元のものに戻る場合があるか
らです。
 また、「先生は『話をする』と言っている。だから、先生の方を向かなくっ
ちゃ。」、このように注目してくれる子どもばかりではありません。それだけでは注
目をしない子どももいるのです。
 つまり、先の指示では「今進行中のことをやめない」、あるいは「意識の半分は作
業行為に残っている」状態なのです。だから、そのような中途半端なで教師の説明を
聞くことになります。
 これでは話の周知徹底にはなりません。
 だから、中の下なのです。
 ただ、子どもによっては、学級の状態によっては、「話をします。(だから先生の
方を向くように。)」というように、(  )で示されたような「かくれ指示」が作
用にする場合があります。                          
 先に書いた子どもが考えてくれたようにです。
 だから、この指示自体は悪い指示ではありません。
 
 3についてです。  

 「先生の方を向きなさい。」と言って教師の方に注目させてから説明に
入る。

 中の上でしょう。
 「子どもの意識を教師の方に注目させてから話し始めよ」という原則を守っている
からです。
 しかし、上ではなく中です。なぜか。
 物を持っている子どもにとっては、やがて物の方に意識が戻ってしまう可能性があ
るからです。
 子どもというものは、教師の話、言い換えれば耳から聞こえてくる音声よりも、目
の前にあるモノ、実物の方への興味が強いのです。しかも
さっきまでそれに意識は集中していたわけです。
 だから、いったんこのような状態を断ち切らないといけません。
 だから、4のような指示が必要になってくるわけです。

  4 「今持っているものを置きなさい。話をします。」と言ってから説
明に入る。
 
 何気ない指示ですが、今まで述べてきたようなことからすると、この指示は理にか
なっており、話の内容を周知徹底するには効果のある指示なのです。
 しかし、この指示は万能ではありません。
 一回の指示では物を置かない子どももいます。そこで、「まだ物を置いていない人
がいます。」とか「三人、物を置いていない人がいます。」 などと指摘する必要が
あります。
 場合によっては「〜君、今持っている物を置きなさい。」と、個人名で指摘する場
合もあります。

 以上、五つの指示の出し方について分析・評定をしてみました。
 「指示の出し方」という教育技術について分析・評定してみました。
 どの指示が効果があり、どの指示が効果が薄いか、今述べた通りです。
 「効果のある」優れた教育技術をたくさんたくさん私たち教師は知って、仕入れて
いく必要があります。
 今回の述べた教育技術は、「話の内容を周知徹底させるために、作業途中の子ども
たちにはどのような第一声、どのような指示の出し方がいいのか」という点のもので
す。
 
 「別にあった意識を教師の方に向けさせる」
 「『予告の指示』を端的にすることで、意識を向ける対象を知らせる」

 このような面での優れた教育技術を今回紹介しました。
 
 今紹介したのとは違う「別な場面」での、「別な意図」の優れた教育技術がありま
す。数限りなくあります。
 私たちはこのような多種多様な教育技術それも優れた教育技術を知り、使いこなせ
るようになりたいと思っています。
 「このような場面のときには」「このような教育技術」が効果的である。
 このように具体的な場面において有効な教育技術を身に付け、使いこなせるように
なりたいと思っています。
 
 優れた教育技術は理にかなっております。
 優れた原理・原則に基づいております。例えば」「教師の方に意識を向けさせてか
ら話し始めよ」というような原理・原則に基づいているのです。
 また、そのときの実態に即して駆使されるのが、優れた教育技術です。その実態に
合った具体的な方法の駆使が優れた教育技術なのです。

 優れた教育技術の駆使までには次の段階があります。

  1 そのときの実態・状況の具体的把握・分析
  2 それに見合った具体的方法(教育技術)の選択
  3 教育技術の駆使

 始まりは、「実態・状況の具体的把握・分析」です。ここから始まるのです。
 優れた教育技術が効果があるのは、実態に即し、優れた原理・原則に基づいている
からです。
 この「個別性」「一般性」の両方を相持つのが「優れた教育技術」です
 私は、このような優れた教育技術を数多く仕入れ、使いこなせるようになりたいと
思っています。しかし、まだまだです。
 まだまだどころか、いつまでたっても覚束ない毎日です。
 
 次回は、「別な場面における優れた教育技術の発揮」という点から述べたいと思い
ます。


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